続・AI時代「でも」ではなく、「だからこそ」アジャイルが大事だと思う理由【後編】
前回は、DORAの「AIは増幅器である」という話やハイフェッツの適応課題の話などを引用しながらAIが台頭する時代において「アジャイルな文化・プロセスがより重要になるのでは」という趣旨の記事を出しました。
AI時代「でも」ではなく、「だからこそ」アジャイルが大事だと思う理由【前編】
今回は、そこからもう少しメタな視点に立って今の時代におけるアジャイルの存在意義について考えてみたいと思います。
AIの急速な進化によって、世の中のあらゆる仕事の前提が大きく変わりつつあります。みんなが新しいテクノロジーの可能性に夢中になる一方で、「正解がない状況下で、どう足元を踏み出せばいいのか」という課題感を持たれている方もいるのではないでしょうか。
「方針が固まらないと動けない」という声
先日、社内のメンバーと雑談していたときにハッとさせられる言葉を聞きました。
「AIの影響で前提が大きく変わりすぎて、今はもうカオスな状態だよね」 「正解がわからないまま、手探りで進めないといけない」 「上層部で方針が固まらないと現場は動けない……」
カオスな状況下では、誰かが明確な方針や正解を示してくれるのを待ってしまい身動きが取れなくなってしまうことがあります。これは決して現場の怠慢などではなく、単に「答えが見えない状況での歩き方」を知らないのではないか。そして、これはアジャイルやスクラムが長らく向き合ってきた状況なのではないか、ということに気づきました。
「複雑な問題」に向き合うための羅針盤
スクラムガイドの冒頭には、こんな一文があります。
「スクラムとは、複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じて、⼈々、チーム、組織が価値を⽣み出すための軽量級フレームワークである。」
ここで言う「複雑な問題」とは何でしょうか。 クネビンフレームワークの言葉を借りるなら「事前に分析しても一意の正解が定まらず、実際に行動しながら情報を増やして、探索的に進めなければいけない性質の問題」だと考えることができます。
今のAI時代がもたらしているカオスは、まさにこの「複雑な問題」そのものだと思います。正解がわからないからと立ち止まって誰かが立てる方針を待っていても、その方針が正しいかどうかを保証してくれるものはありません。
動いてみて初めて次に進むべき道が見えてくる。そんな世界線に私たちは立たされています。
「北極星」を見据え、小さく実験を繰り返す
では、具体的にどう動けばいいのか。そのヒントとして非常にわかりやすいのが「アジャイルのカタ(Agile Kata)」というフレームワークです。
アジャイルのカタは、大きく以下の4つのステップで構成されます。
方向性を理解する
現在地を把握する
次の目標となる状態を決める
次の目標に向けて小さく実験を繰り返す
ステップの1つ目にある「方向性」は、インセプションデッキで言うところの「我々はなぜここにいるのか?」という根源的な問いに対する答えです。今いるチームやプロダクトの存在意義であり、より大きな組織のミッションやビジョンとどうアラインしているのかを指し示すものです。 前提が崩れゆくカオスな時代だからこそ、この「変わらない北極星」が拠り所になります。
そして、ステップの②〜④はまさにスクラムのプロセスそのものです。 現時点でのインクリメントを把握した上で、北極星に向かうためのマイルストーンとなるプロダクトゴールを設定し、スプリントという短い期間で小さく実験する。その結果をもとに現在地をふりかえり、もし周囲の状況に変化があったり、新たな学びがあったりすれば、進む方向や目的地を柔軟に修正していく。
この「北極星」というブレない目的意識と、「小さく実験する」という柔軟なフットワークの組み合わせこそが、カオスな状況を歩くための知恵ではないかと思っています。
自分たちの「コンテキスト」の中で正解を探る
AIは今まさに過渡期にあります。 世の中には「これが絶対的な正解だ」という教科書的な答えはまだ存在しません。もちろん役に立つナレッジやプラクティスは日々生まれていますが、それをそのまま自分たちに適用すれば上手くいく、という単純なものではないはずです。
このカオスな状況の中で求められるのは、現場での試行錯誤を通じて今そのチームや組織が置かれたコンテキストの中での正解を探索的に導き出す姿勢だと考えています。
アジャイルとは単なる開発手法ではなく、そうした不確実性の高い状況に適応していくための「コツ」が詰まった思想です。誰も答えを持っていないAI時代「だからこそ」、アジャイルな価値観から学び直せることはまだまだたくさんある気がしています。
手探りのプロセスを、もう少し面白がってみる
「答えがない」と恐れて立ち止まるのではなく、自分たちなりの北極星を見つめながら、まずは小さな一歩を踏み出してみる。違っていたら、また戻ってやり直す。
「戦国時代みたいだ」という社内の嘆きを聞きながら、ふとそんなことを考えました。 正解がわからない手探りのプロセスを、みんなでもう少しだけ面白がりながら進んでいけたらいいなと思っています。
この記事を書いた人
What is BEMA!?
Be Engineer, More Agile


