【体験談】インド人学生とのMVP開発!リモートPMO・メンターを通しての学び
はじめに
株式会社メンバーズの三上です。
所属している部署では、高度海外人材の採用や活躍に向けたリサーチを行っています。
本記事では、採用活動の一環として実施したインド現地の学生5名を対象としたリモートインターンシップについて、PMO・メンターとして参加したリアルな体験談とそこから得られた学びをお届けします。
AI時代に、なぜ今「インド高度IT人材」に注目するのか
国内の深刻なIT人材不足とDXの加速に加え、AI技術の発展によって「単純なコーディングや作業の代替」が進む今、求められるのは成果物の検証や意思決定を担う高度なエンジニアリング力とAI活用のケイパビリティの獲得と考えています。
また日印の投資目標、経産省の「India-Japan Talent Bridge」など国策レベルでの日印連携が加速しています。
参考
こうした背景のもと、弊社では高い技術力を持ったインドのエンジニア人材に着目し、インターンシップを通した採用活動を行っています。
過去のインド視察記事
インターンシップ受け入れ概要
2025年サマーインターンシップに引き続き、第二回目のインド学生インターンシップの開催に至りました。
インターンシップ基本情報
勤務形態:フルリモート(インド現地からの就業)
インターンシップでの業務内容:フルスタックエンジニアとしての開発業務
受け入れ人数:5名
受け入れ期間:5月11日から7月31日まで (57営業日)
運営体制:PMO/メンター兼通訳 1名、PO1名
スクラム開発の採用や、タイムゾーンを考慮したスケジューリングに関しては昨年を踏襲する形としました。私自身もインターン生とのコアタイムを長めに確保する目的で、社内の通常勤務時間より1時間遅らせての業務開始・終了をしていました。特に、終業前の1時間は社内コアタイムから外れるため、インターンシップ業務に集中でき、この時間でレビューやインターン生との1on1をじっくり行いました。
就業時間表
また昨年からの変更点として、運営体制が挙げられます。
昨年はスクラムマスター/メンター1名、通訳1名(海外籍)、PO1名という構成でした。
今年は、PMO/メンター兼通訳 1名、PO1名で実施しました。今回はスクラムマスターは不在でしたが、自身がエンジニアとして経験してきたことや、昨年度の運営メンバーからのアドバイスを得つつ、「現場・クライアントワークに近いファシリテーションやメンタリング」ということを意識しながら運営を行いました。
加えて、今年のインターン生の特性を鑑みて、取り入れたものが2点あります。
1つ目は、インターン生同士の1on1実施です。毎週Assigneeを決め、そのAssigneeと他メンバーが日替わりで、少なくとも15分毎日自由に話すというシンプルなものです。
今年の参加者は5名中4名が同大学出身でした。国内でも数多くの工科系大学が存在する中で、「大学が同じ」ということはひとつ大きな共通項となります。参加当初、お互いの名前は知っている程度の親交度であっても、インターン生間で合致するコンテキストが多く運営側としても暗黙知が多いという印象を抱いていました。「言語化されていない暗黙知がボトルネックとなり、チーム内での意思決定における最終段階での思考の深化や、建設的な議論が妨げられているのではないか」という課題感と、サマーインターンとして一緒に過ごす仲間としてお互いを「人」として理解を深めることで、日々の業務のしやすさに繋げて欲しいと考え取り入れました。インターン生からも「一緒にトレッキング行くかも!」「小さなきっかけがあることで、業務の相談もしやすくなった」といった様々なポジティブなフィードバックを得ることができました。
また、改めて重要だと感じたことは、「なぜインターン生同士の1on1を行うのか」の意図をインターン生にも理解してもらうことです。正直ベースで課題感も伝えつつ、チームとしてレベルアップするにはどうすべきかを自分ごととして納得感を持ってもらえたことで、ポジティブな方向に向かったのではないかと思います。
2つめは、ナレッジ・トランスファーです。
インターン生の多くは、「改善」「報連相」といった経営思想や日本の組織風土に強い興味・関心を抱いていました。またメンバーズに興味を持つきっかけとして、CSV戦略や脱炭素の理解を深めていきたいという声もありました。実体験としての情報を得るのは難しく、また彼らにとって日本人と密にコミュニケーションを取る機会そのものが貴重だということを知りました。
また、「日本人としてどう捉えているのか」「メンバーズ社員として、どう取り組んでいるのか」を知ることにより、日本の就業感やメンバーズの理解を深めることがインターンシップでのコミュニケーションで生じうるギャップを少なくできるのではないかと逆フィードバックを受けたこともきっかけになり、実施を決めました。
トピックは「インターン生が知りたいこと」「PMOとして日々の業務で改善が期待できること」の2軸で決めました。(時間の捉え方、雇用型の違い、CSV・脱炭素、日印首脳会談を通して、品質管理など)
特に日々の業務で改善が期待できることについては、ただその物事の捉え方を伝えるのではなく、その結果どういったことが巻き起こるのか、ネクストアクションは何かを示すことが理解の助けになることを実感しました。
ナレッジ・トランスファーの1つ | ~モノクロニックとポリクロニック~ 多様な時間感覚をチームの強みに
プロジェクトの背景とミッション
本インターンシップでは、インターン生全員で1つのチームとして「エンジニアの潜在的なスキルや特性を多角的に可視化し、個人のキャリア成長と最適なチームビルディングを支援すること」を目的としたプラットフォーム開発に取り組んでもらいました。
あらかじめプロジェクトの目的や現状の課題、想定される機能の一部を提示した上で、インターンチーム自らがスコープと自らのケイパビリティを鑑み、「MVPを自分たちで定義し、POとすり合わせながら開発を進める」という、実践的かつ難易度の高いミッションを設定しました。
私はPMO・メンターとして、Kickoffやガイダンス、各スクラムイベントのファシリテーション、POとインターン生の間での翻訳・調整、そして個々の週次1on1などを担当しました。
※ガイダンス:初日に就業ルール・及びインターンシップ詳細について共有
就業ルールは、勤怠/出欠管理・ドキュメント管理・セキュリティについてです。
勤怠/出欠管理について、時間の捉え方は文化や社会的立場(学生/社会人)によっても様々かと思います。遅刻の扱いなど、明確に連絡フローやセーフ/アウトのラインを伝えることが重要だと実感しました。
また、セキュリティについては、VPN接続や最新のセキュリティパッチの適用などを促し、インターンシップ期間中継続してセキュリティレベルを高く保つ意識づけを行いました。後々の開発着手時のデータリソースやソフトウェアライセンスの管理などにも紐づく部分になります。企業インターンやデプロイメントの経験があまりない場合これらの観点が抜け漏れがちになるため、継続的なフォローアップは重要です。
インターンシップの詳細にあたる主要機能、開発環境、成果物などは初日まで内容を伏せていました。限られた業務時間内でメリハリをつけて開発すること、チームとして成果を発揮することを重視していたため、あえて事前にはお伝えしていませんでした。
PMO・メンターとして直面した「文化・コミュニケーションのリアル」
粘り強いフィードバックと「期待値」の言語化
プロジェクト序盤、最初に大きな壁となったのがインターン生が「何を作るか」ではなく「どう作るか」へ向きがちだった点です。高い技術力を持ち合わせている上、AI活用も相まってアウトプットが先に挙がってきてしまうという状況でした。
結果として、プロダクトがユーザーにどんな価値を届けるべきかという本質的な議論よりも、「どのようなAI技術やライブラリを使って実装するか」という手法・手段が先行してしまう状態に陥っていました。
インターン生には、「POの抽象的な要望を理解し、自らMVPを定義して形にする力」という点を今回のインターンシップでの期待値の一つとして挙げていました。POが「答え」を示して与えられたものを作るのではなく、インターン生自身で価値を見出しながら双方で試行錯誤しながらすり合わせていくプロセスを重視したかったためです。
また、このフェーズでの合意形成や業務の進め方がインターンシップ全体の進行を左右すると考えていたため、あえてじっくりと時間をかけて進めていきました。
この点に関しては、粘り強くフィードバックを積み重ねることに尽きました。
インターン生からは「インセプションデッキ作成やMVP定義に対するフィードバックは手厳しかった(笑)」といった正直な声も挙がりましたが、常に前向きな姿勢で喰らいつき、奮闘してくれました。「何としても学び、成果を出す」という熱量と圧倒的な行動主体性に私自身も強い刺激を受けましたし、彼らのこの貪欲な姿勢があったからこそ、最終的に目線を合わせ、素晴らしい成果を挙げてもらえたのだと感じています。
多言語・異文化チームならではの「見えない壁」
グラウンドルールとして「英語コミュニケーション」を必須にしていましたが、リモート開発を進める中で、言語や文化の奥深さを痛感する出来事が多々ありました。
①共通言語の裏にある「母国語」による情報格差
インターン生同士が作業を進める中、チーム内では時折母国語で会話が交わされていました。全員がインドからの参加者とはいえ、第一言語はHindi(ヒンディー語)の人もいればTamil(タミル語)の人もいます。
一見同じ「インドチーム」に見えても、実はチーム内で使われる言語の違いによって情報密度の偏りや情報格差が発生していたのです。個別の1on1を実施する中で「言語により、チーム内の会話で少し分かりづらい部分がある」といった本音がポロリと漏れ出しました。1on1という個人相談の場を定期的に設けていたからこそ、この見えない摩擦に気づくことができました。
普段の日本語の会話では疑う余地のない新たな気づきであり、多言語をバックグラウンドとするチームを運営する上での貴重な学びとなりました。
②非言語の発見
もう一つ面白かったのが、リアクションの違いです。
インドでは首を横や斜めに振るボディランゲージが「Yes」を意味することが知られています。ですが、ミーティング中に首を横に振るインターン生と、縦に振る(うなずく)インターン生が混在し、最初は非常に戸惑いました。
対話を進める中で、最終的には全員「Yes」を意味していたことが判明。理由を聞いてみると、「普段通り横に振っていた」人もいれば、「日本人メンバーのうなずきを見て、真似してみようと思って縦に振っていた」人もいました。単なる文化の違いだけでなく、相手に歩み寄ろうとする姿勢が生んだ微笑ましいギャップであり、文化的多様性を肌で感じる体験となりました。
コミュニケーション面での工夫
フルリモートかつ国際的なチームでスムーズに開発を進めるため、ミーティングの事前準備と事後のアクションのフローを整理しました。
参加前準備: 各ミーティングで「何を議論し、何を決定すべきなのか」のアジェンダをインターン生より提示してもらい着地点を明確化。
参加後フォローアップ: ミーティング終了後、インターン生自身に議事録をまとめてもらい、理解のすり合わせを行う。
昨今は、AIによる自動文字起こしや議事録作成が普及し、業務効率化の観点からはそちらを使うのが一般的です。しかし、今回のインターンシップではあえてAI議事録を採用しませんでした。
言語・文化・時間軸の捉え方が多岐にわたるチームだからこそ、「理解した内容を自身の言葉で言語化する。相手に伝わる形で自身の理解度を示しつつ、すり合わせる・問題提起を行う」というステップこそが、認識のズレを防ぐ最大の鍵になると考えたからです。
インターン生自身が自分の言葉で要約し、それをPOやPMOと確認し合うフローを挟んだことで、段階的なすり合わせを可能とし、チーム全体の確信度を高めることができたと感じています。
インターンシップチェックアウト時のメンバー集合写真 | 達成感に溢れていました!
さいごに
今回のインド人学生向けの海外インターンシップは、単に指導・管理する側という一方的な関係ではなく、彼らの高い技術力や適応能力、さらには貪欲な姿に背中を押されながら、共に試行錯誤を重ねた日々でした。
また、1on1の中では、技術や業務に関わるところだけでなく、趣味、お互いの文化や時事問題など幅広い内容について会話し、信頼関係を築くことができたと感じています。
これからグローバルな環境に挑む方や、リモートチームのメンターを担うエンジニアの方にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
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