社内Labから世界へ — AWS 10,000 AIdeas Competitionに挑戦し、セミファイナリストに選ばれるまで
はじめに
私は、デプオプスリードカンパニー内の社内の研究開発制度「DevOpsLab」のもとで活動する 音声×生成AI Lab のメンバーです。このLabでは、音声AIや生成AIの技術を調査・学習しながら、将来の新規事業に繋がるアイデアを模索しています。
今回、このLab活動の中で生まれたアイデアのひとつを、AWSが主催するグローバルコンテスト 「10,000 AIdeas Competition」 に応募しました。結果、世界中の応募者の中から上位1,000名のセミファイナリストに選出されました。
この記事では、Lab活動の中でどのようにアイデアが生まれ、コンテストへの挑戦に至ったのか、その過程と学びを共有します。
音声×生成AI Labってどんな活動?
音声×生成AI Labは、2025年10月に活動を開始したLabです。隔週金曜日の30分間の定例ミーティングを中心に、メンバー2名(リーダー山岸、メンバー兼子)で活動しています。
Labのビジョン
既存の音声AIサービスを利用することから始め、その可能性と限界を深く理解する。最終的には、事業に貢献する独自のサービスを構想できる技術的な知見を組織内に蓄積することです。
具体的には、こんな活動をしています:
技術トレンドのキャッチアップ:音声エージェントの仕組みや、生成AIの最新動向を調査
BEMA記事での技術発信:学んだことを記事としてアウトプット
新規事業に向けたアイデア出し:事業に繋がるアイデアを継続的に創出
この「アイデア出し」の活動が、今回のコンテスト挑戦のきっかけになりました。
Labの活動目標のひとつに、「新規事業化に向けて200〜300個のアイデアを出す」 というものを掲げました。
下記のように、Notionのデータベースを利用してアイデアを管理しています。
サービスとして開発できるか。などの観点は考えずに、面白そう。や、楽しそう。さまざまなものをアイデアとして登録しています。No.62の上司の気分察知AIは、朝の挨拶の具合で上司の機嫌を伺うことができるデバイスがあるといいね。という過去の経験から生まれました。
最初は「200個も出せるのか?」と思いましたが、テーマを決めて体系的に発散する方法を取り入れることで、アイデアはどんどん広がりました。たとえば、「音声は波である」という物理的な性質に着目し、反射・共鳴・干渉・屈折といった波の原理とAIを掛け合わせることで、31件の「アイデアの種」を生み出しました。最終的な結果として、200件以上のアイデアを創出しました。この中には、医療・教育・地方自治体支援など、さまざまな分野のアイデアが含まれています。
そして、この大量のアイデアの中から ひとつのアイデアがコンテストへの切符 になりました。
AWS 10,000 AIdeas Competitionとの出会い
AWS 10,000 AIdeas Competition は、Amazon Web Services(AWS)が主催する、世界中の開発者を対象としたグローバルコンテストです。AWS史上最大規模のデベロッパー向けコンテストとされており、賞金総額は25万ドル(約3,750万円)、さらにAWSクレジットや技術リーダーとの交流機会なども用意されています。
主催: Amazon Web Services(AWS)
規模: AWS史上最大のデベロッパー向けコンテスト
賞金総額: 25万ドル(約3,750万円)+ AWSクレジット3万ドル
審査カテゴリ: 社会的インパクト、業務効率化、日常生活の向上、商用ソリューション、クリエイティブ表現
選考プロセス: 応募 → セミファイナル(1,000名)→ コミュニティ投票(300名)→ ファイナル(50名)→ 受賞
「世界規模のコンテストに社内Labのアイデアで挑戦してみよう」——そんな思いから、応募を決めました。
※賞金は2026年1月5日時点の情報です。
生まれたアイデア:Link-Margin(リンク・マージン)
コンテストに応募したのは、「Link-Margin」 というアイデアです。
どんな課題を解決するの?
多国籍・多文化なチームでは、同じ言語で話していても 「文化的な前提の違い」 による摩擦が起きます。例えば、ある日本のエンジニアチームが、エジプト出身の同僚のためにハラルレストランを1時間かけて探しました。でも実は、シンプルな魚料理のお店で全く問題なかったのです。善意はあったのに、文化的な背景の情報が足りなかった。このような「見えない摩擦」は、世界中の職場で日常的に起きています。
Google翻訳やDeepLのような翻訳ツールは「言葉」を変換してくれますが、文化的なタブーや言葉の重みまでは教えてくれません。
Link-Marginのアプローチ
Link-Marginは、会議中の発言をAIがリアルタイムで分析し、「この言葉は文化Aでは命令に聞こえるけど、文化Bでは提案として受け取られるかもしれません」 というように、解釈の可能性をそっと教えてくれるツールです。
大事なポイントは、AIが「正解」を押しつけないこと。あくまで「気づき」を提供し、最終的な判断は人間が行います。この「人間の判断に余白(マージン)を残す」という思想が、プロダクト名の由来です。
どうやって動くの?(ざっくり解説)
技術的な仕組みを、なるべくシンプルに説明します。
Google Meetの字幕をキャプチャ — Chrome拡張機能が、会議の字幕をリアルタイムで読み取ります
AIが文化的リスクを分析 — AWSのAIサービス(Amazon Bedrock)が、発言の意図や文化的なリスクをバックグラウンドで分析します
結果をサイドパネルに表示 — リスクのレベルに応じて色分け表示し、改善提案を添えて通知します
普段どおりGoogle Meetで会議するだけで、文化的なサポートが自動的に機能する設計です。ユーザーに余計な操作を求めません。
一次審査通過!セミファイナリストに選出
2026年1月にアイデアを提出し、2月にはセミファイナリストの発表がありました。
結果は、一次審査通過。上位1,000名のセミファイナリストに選出されました。
実際に応募したアイデアページ
AWS公式からの通知メールより
「おめでとうございます!あなたのアイデアが10,000 AIdeas コンペティションのセミファイナリストに選ばれました。あなたは構築フェーズに進む上位1,000人のイノベーターの一人です。」
正直、驚きました。社内のLab活動から生まれたアイデアが、世界規模のコンテストで評価された。そのことが純粋に嬉しかったです。
このプロジェクトは、2人の強みを活かした分業で進めました。
山岸(開発担当)の主な役割: コーディング、デモ動画の作成、アーキテクチャ図の作成
兼子(ドキュメント担当)の主な役割: 提案書の作成、申込書の記入、ドキュメント全般、コンペ応募手続き
ひとりでは絶対にできなかった挑戦です。お互いの得意分野を持ち寄ることで、短期間でコンテストに出せるレベルまで仕上げることができました。
挑戦して感じたこと
アイデアが「外に出る」ということ
社内のLab活動では、アイデアは社内に留まりがちです。でも今回、コンテストに応募することで、私たちのアイデアが初めて外の世界で評価される経験をしました。
「これは本当に価値があるのだろうか?」という不安はありました。でも、実際に審査を通過したことで、自分たちが日々考えていることには意味があると実感できました。
「余白」という哲学
Link-Marginの核心にある 「人間に余白を残す」 という思想は、実はLab活動の中で社内の対話から生まれたものです。
AIが全てを自動化するのではなく、人間が考え、判断するための「気づき」を提供する。この設計思想は、私たちがインフラエンジニアとして大切にしている 「人間が最終判断する」 という価値観にも通じています。
量が質を生む
200件以上のアイデアを出す活動は、正直しんどい時期もありました。でも、たくさんのアイデアを出し続けたからこそ、Link-Marginという「光るアイデア」に出会えた。量をこなすことで質が上がるというのは、本当だったと感じています。
今後の展望
二次審査(Stage 2)の結果、残念ながら落選となりました。AWSのコミュニティ投票フェーズにおいて、十分な票を集めることができませんでした。
しかし、この経験を通じて多くの課題と学びを得ることができました。票を集めるための工夫として、社内への積極的な展開や、他のコンペ参加者のアイデアを見て勉強すること、さらには自分たちのアイデアを他の参加者に見てもらうための宣伝活動など、今後に活かせる改善点を数多く発見できました。 結果がどうであれ、外の世界に向けてアイデアを発信し、評価を受けること自体に大きな価値があると感じています。
今後も音声×生成AI Labでは、新しいアイデアの創出と技術的な挑戦を続けていきます。社内の活動から世界へ。この流れを、ひとつの文化として定着させていきたいと思っています。
「やってみよう」が世界への第一歩。
社内Lab活動から生まれたアイデアでも、世界のステージに立てる。私たちの経験が、これから何かに挑戦しようとしている方の背中を少しでも押せたら嬉しいです。
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