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FinOps段階導入の実践ガイド

はじめに 

はじめまして、株式会社メンバーズ デブオプスリードカンパニーOpen in new tabに所属している橋本と申します。

突然ですがみなさんはFinOpsという言葉をご存知でしょうか?

FinOpsとは、クラウド利用のコストの可視化・最適化とビジネス価値の最大化をするための文化・フレームワークです。近年クラウド活用が当たり前になる一方で、「月末に請求額を見て驚いた」「コストとその必要性の説明を求められたがうまく説明できない」といった課題を抱える組織も少なくありません。そういった問題に対処するために役立つのがこのFinOpsという概念です。

私自身、社内のFinOps Labという活動の中でFinOpsという概念に初めて触れたのですが、いざ調べてみると概念の解説は多いものの、結局何をすればいいのかが分かりにくいと感じました。

< FinOps公式サイト: https://www.finops.org/framework/Open in new tab >

そこで本記事では、FinOpsを「可視化→最適化→自動化」の3段階で小さく始めるための実践ガイドをまとめてみました。

FinOpsは「コスト削減」ではなく「意思決定を早くする運用」

FinOpsは、コストを下げる活動というより、クラウド支出を正しく理解して意思決定を早くするための運用体系です。一方で、最初から完璧なコスト管理方法やダッシュボードなどを揃えようとすると、関係者調整やデータ整備で詰まりがちです。

FinOpsは導入する際、一気に整備するよりも

  1. 可視化(情報収集と分析)

  2. 最適化(無駄の削減と効率化)

  3. 自動化(継続的な改善運用)

の順で、最小構成から改善サイクルで育てるのが現実的です。
次項以降では、各フェーズのポイントと具体的な施策を挙げて考えてみます。

Phase 0:準備(認識合わせ)

よくある3つの悩みとして以下が挙げられます。

  • 部門別にコストの説明ができない

  • 最適化施策が一過性で続かない

  • アラートを設定しても形骸化する

FinOpsの段階導入がうまくいくかは、最初の認識合わせが大事になってきます。
そこで準備段階として各フェーズを実践する前に以下のことに取り組みます。

対象のスコープを絞る

例:1クラウド、1事業、1プロダクトなど

目的をシンプルにする

  • 例:「月末の請求書で初めてコスト問題を認識するといった課題を解決する」

  • 例:「部門別にコストの説明責任を持てる状態にする」

関係者(最低限)を揃える

  • FinOps 推進者(FinOps推進の実務担当者)

  • エンジニア(実装・タグ運用)

  • 経理担当者(会計・請求書・配賦(コストを組織や部門に按分すること)の観点)

この段階では「完璧な設計」より「動き出すための最小合意」を優先します。

Phase 1:可視化(情報収集と分析)

FinOps導入初期で特に効果的なのが、可視化フェーズ(Understand Usage & Cost)です。
このフェーズのゴールは、組織のクラウド使用状況とFinOpsスコープ全体の理解を深めることです。
可視化では、以下の4つのポイント(原文ではケイパビリティ)を押さえて、最低限の到達点が実現できるようにします。

Data Ingestion(データ取り込み)

  • 取り込むデータを決める(クラウド請求、利用量、サブスクリプション等)

  • データの正規化を意識する(可能であれば、請求データの形式はFOCUS(FinOps Open Cost and Usage Specification)などの標準仕様に寄せる、または将来寄せられる余地を残す)
    < 参考:
    https://focus.finops.org/Open in new tab >

  • 「毎月これだけはデータ取得できている」という基準を作る

注意点

対象を広げ過ぎて、データ整備で止まってしまう。

最低限の到達点

月次の請求と主要な利用量を、同じ粒度で比較できる状態を目指す(集計ルールが固定されていること)。

Allocation(配分)

  • 「誰がどの支出に責任を持つか」を仮でよいので置く

  • タグ付け戦略、共有コスト戦略、配賦ルールを用意する

注意点

100%のタグ付けを最初から要求して現場が疲弊してしまう。

最低限の到達点

上位コストのリソース80%以上に所有者(チームまたは個人)が紐づいている状態。最低限のタグセット(例:環境・プロダクト・チーム・用途・コストセンター)が定義されていること。

Reporting & Analytics(レポートと分析)

ペルソナ(役割)ごとに知りたいを起点に設計する。

  • エンジニア:自チームのコスト内訳、使用率、異常増加

  • 経理担当者:請求の説明、配賦の根拠、予実

  • 経営・決裁権者:クラウドコストに関するトレンドと意思決定に必要な要約

成功条件

会話が生まれるレポートをまずは1つ作ること。

最低限の到達点

ペルソナごとに1つ以上のレポートが存在し、月次で更新・共有されている状態。

Anomaly Management(異常管理)

  • 異常の粒度を決める(サービス別、タグ別、日次・週次など)

  • 通知して終わりにせず、一次対応の型を決める(例:検知→影響範囲の確認→原因仮説→暫定対処→恒久対策)

最低限の到達点

主要サービスに対して異常検知ルールが設定され、通知先と一次対応の担当が決まっている状態。

Phase 2:最適化(無駄の削減と効率化)

可視化ができると、何を直せば効果的かが見えてきます。
ここからは、価値を落とさない再現性の高い施策から積み上げます。

  • リソース適正化(サイジング)

  • リソースの予約・コミットメント

  • スポット活用(処理中断前提の設計)

  • ストレージ/ネットワーク最適化

  • アイドルリソース削除(定期棚卸しを運用に組み込む)

最適化は「全体を均す」より、「上位コストから」対処すると関係者の納得と成果が出やすいです。

アウトプット例

コスト上位10施策の優先度リスト(施策名・想定削減額・担当・期限)。

Phase 3:自動化(継続的な改善運用)

手動の最適化は、継続すると間違いなく疲弊してしまいます。
なので改善サイクルを回すために、運用を仕組み化するようにします。

  • リソースのスケールと停止の自動化(非稼働時間停止など)

  • ポリシーベースの自動適用(必須タグ、予算、逸脱検知)

  • 異常検知の自動化(ベースライン設定→検知→通知→関連情報の集約(原因仮説の提示まで))

  • IaC(Infrastructure as Code)との統合(タグやサイズ、停止ルールをコードに埋め込む)

  • 権限と例外の設計(誰が自動化ルールを変更できるか、承認フロー、緊急停止手順)

アウトプット例

開発環境の夜間自動停止ルール(対象リソース・スケジュール・例外条件・効果の定量値)。

おわりに

FinOpsは大掛かりな取り組みに見えますが、本記事で紹介したように「可視化→最適化→自動化」の順で小さく始めれば、最初の一歩は意外とシンプルです。

まずは1つのクラウド、1つのプロダクトにスコープを絞り、コストの見える化から着手してみてください。完璧な体制を最初から目指さずに、小さな成果を積み重ねながら、改善サイクルの中で運用を育てていくことがFinOps定着までの最短ルートになると思います。

また、FinOpsでは関係者間の説明・共有・合意形成といった工程が特に難しいのですが、ここは適宜AIなどを活用したりして負荷を抑えながら進めると良いと思います。

私もまだFinOpsについて理解が足りていない点も多いので、これからも業務の中で意識して活用しながら学習していきたいと思っています。
本記事がみなさんのFinOps導入の第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

※本記事は2026年4月時点のFinOps Framework(Framework 2026)に基づいて執筆しました。最新情報は下記公式サイトをご確認ください。
https://www.finops.org/framework/Open in new tab 

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この記事を書いた人

橋本 真志
橋本 真志
2024年から株式会社メンバーズ DevOpsLeadカンパニーでDevOpsエンジニアとして参画しています。バックエンド領域からクラウド・インフラ方面へ知識を広げるべく学習に励んでいます。最近はAIの発展を楽しみながら使い方の試行錯誤をしています。
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