【社内イベントレポート】人間によるコーディングは禁止の「AI駆動開発ハッカソン
はじめに
初めまして、株式会社メンバーズに所属する中途入社の望月です。
近年、AI技術の進化は目覚ましく、開発の現場にも大きな変革をもたらしつつあります。そんな中、株式会社メンバーズでは先日、社内向けに「AI駆動開発ハッカソン」を開催しました。このハッカソンの最大の特徴は、「人間による直接のコーディングは禁止」という、極めてシンプルな、しかし挑戦的なルールです。
2週間という限られた期間の中で、参加した6チームはAnthropic社のAIコーディングエージェント「Claude Code」をはじめとしたAIツールを最大限に活用し、社内の"ちょっとした困りごと"を解決するミニツールを開発しました。
この記事では、成果発表会で披露された6チームすべてのユニークな取り組みを、実際のプロダクト画面とともに運営目線で詳細にレポートします。「AIに実装をどこまで任せられるのか」「AI駆動開発は実務でどう活きるのか」、そして「人間はコードを書かずに何をするべきなのか」に興味がある方に、ぜひ最後まで読んでいただければ幸いです。
ハッカソンの目的
昨今「生成AIで開発が変わる」という話は、ニュースや他社事例としてよく耳にします。しかし、知識として知っているだけでは、業務にどう活かせるかは判断しづらいものです。それを知るためには実際に自分たちの手を動かしてみるのが効果的です。
そこで今回は、実際に手を動かしながらAI活用を体験してもらうことを重視して目的が設定されました。 本企画の目的は、次の2点です。
AI駆動開発を実体験し、「AIに何ができるのか」の認識をアップデートする
そこで得た感覚を、実業務での活用につなげる
ハッカソンの内容
前述の通り今回のハッカソンは「人間による直接のコーディングは禁止」というルールで開催されました。それ以外のルールは次のとおりです。
テーマは「社内の"ちょっとした困りごと"を解決するAI駆動ミニツール開発」
新規開発限定
開発期間は1週間
開発期間後は発表会を開催
社内投票と審査員評価で賞を決める
ハッカソンの成果物紹介
今回のハッカソンでの各成果物を紹介します。
Aチーム — YAMABIKO
プロダクト:議事録から課題の抽出やプロトタイプの作成までできるアプリケーションです。
会議の文字起こしを貼り付けて「分析する」を押すと、「言及頻度」「感情強度」「解決可能性」の3軸で困りごとを自動抽出し、根拠となる発言引用とスコアをカード形式で提示します。さらに、その解決策になるアプリを生成するためのプロンプト(Gemini向け)まで出力してくれます。現状は手動で文字起こしを貼り付けるMVPですが、将来的にはカレンダー連携で会議後に自動で解決策がアプリに並ぶ体験を目指しているとのことでした。
解決したい困りごと:Aチームは、特定の困りごとを一つに絞らず、一段抽象化した問いを立てていました。「AI時代に、ちょっとした困りごとを発掘して解決策を考えるプロセスに、人間が関わる必要があるのか」という問いです。発想のきっかけは、オンライン会議中に「AIに聞けばいいものを、人間が楽しくなってずっと話しちゃっていた」という気づきだったそうです。
AI活用の工夫:Difyでパイプラインを構築し、発言の前処理(不要情報の削除)→3軸スコアリング→厳格なJSON出力という流れで安定稼働させています。開発中に認証の壁にぶつかった際も、AIとの相談でその場でアーキテクチャを転換したそうです。実験として、オンライン会議にAI(Claude)を一人の参加者として招待し、同僚として扱う取り組みも行っていました。
Bチーム — 目安箱アプリ
プロダクト:匿名で組織への意見を投稿できるアプリです。
投稿された意見はAIが自動で要約・感情分析(ネガポジ判定)・カテゴリ分類を行い、一覧画面ではカテゴリ別・ネガポジ別に絞り込んで俯瞰できます。あたたかみのあるUIも、プロダクトのテーマにマッチしていると評判でした。
解決したい困りごと:社内には以前も目安箱(意見箱)の制度がありましたが、意見の集計担当者が生々しい不満や批判を直接読むことによる精神的負担が大きく、担当者が疲弊して制度自体が廃止された経緯があったといいます。「意見は集まるが、受け手が壊れる」という構造的な課題が開発の出発点でした。
AI活用の工夫:Claude Codeでの実装に加え、DifyのAIワークフローで意見の感情分析・カテゴリ分類を行っています。2人組でモブプログラミングを行い、片方が画面共有しながらAIに指示を出し、もう片方が別のAIで助言する進め方が特徴的でした。複数のAIに同じ機能を作らせて比較し、良い方を採用する場面も見られました。
Cチーム — Vibe Writing
プロダクト:社内ブログ執筆に特化したエディタです。
左に記事一覧、中央にMarkdown対応の執筆エリア、右にプレビューという3カラム構成で、「AIに質問」(記事の文脈を踏まえた構成・言い換えの相談)、「AI補助」(入力が止まると次の一文を提案するリアルタイム支援)、「Google Docsへの出力」の3機能を備えています。名前は「バイブコーディング」の執筆版として名付けられました。
解決したい困りごと:Cチームは社内ブログの執筆時、ドキュメントとAIチャットを行き来してコピペを繰り返す作業が地味なストレスになっていることに注目しました。文章の相談をするたびに全文をAIに貼り付け直す手間や、執筆中に手が止まった時に都度AIへ聞きに行く手間が課題だと考えたそうです。
AI活用の工夫:TypeScriptとGoogle Apps Scriptを使い、Claude Codeで実装。プロダクト内のAI機能にはDify APIを利用しています。まずは小さく作って社内の使用感を検証する狙いで、サーバー費用がかからず共有しやすいGoogle Apps Scriptを選んだとのことでした。
Dチーム — Lynxシェアめくり
プロダクト:Lynx(社内メディア)の閲覧体験を改善するChrome拡張機能です。
前後の記事に直接移動できるナビゲーション、記事名とURLをチャットに貼りやすい形に整形してコピーする機能、タブに戻ると自動でリロードする機能の3つを備えています。
解決したい困りごと:記事を読むたびに一覧画面へ戻らないと次の記事に移れない、共有ボタンを押しても日本語がエンコードされた長いURLしかコピーされずチャットでの共有がしづらい、新着記事が出ても手動リロードしないと気づけない、という3点です。
AI活用の工夫:Claude Codeとのペア開発を全工程で活用。不具合が起きたら「まず原因を教えて」から着手し、UIの試作は小さく変更してダメならすぐ戻すサイクルを繰り返したとのこと。拡張機能の開発経験はゼロだったものの、AIとの対話だけで約4時間で実装できたそうです。
Eチーム — Skill Finder
プロダクト:自然文の質問を入力するだけで、社内のスキル保有者を検索できるCLIツールです。
スキル資料をローカルで解析・埋め込みし、まず社内でのみ意味検索を行った上で、関連度の高い候補者情報だけをAIに渡して自然文で回答を生成する構成にすることで、資料本文を外部に送信しない設計にしています。
解決したい困りごと:社内のスキル情報が資料として散在しているだけで、横断的な検索ができないという課題がありました。加えて、Webアプリ以外の領域(CLIやRAG構成)に挑戦したいという技術的なチャレンジ意欲も開発の背景にありました。
AI活用の工夫:EチームではClaude Codeと仕様駆動開発の手法を使い、要件定義から実装・検証まで一連の工程をAIに任せ、人間は各フェーズの承認と、判断が割れる場面での意思決定に専念しました。実装後は別視点でレビューする役割のAIも導入し、実際のバグ検出に役立てたといいます。
Fチーム — 社員情報管理アプリ
プロダクト:社員に紐づく情報を「基本情報」「稼働情報」「アカウント情報」の3種類に分けて一元管理するWebアプリです。
検索・新規登録・インライン編集に対応したシンプルなテーブルUIで、まずはローカルで動くCRUDアプリとして試作されたそうです。
解決したい困りごと:社内には複数の管理台帳(表計算シートなど)が乱立し、情報の一元管理ができていませんでした。データ量が増えるほど表が見づらくなり、特にスマートフォンからの操作性に課題があったといいます。
AI活用の工夫:まず仕様書のドラフトを人間が作成し、Claude Codeに投げて矛盾点や曖昧な点を指摘してもらい、その回答をもとに人間が仕様を修正。「壁打ち」のサイクルを繰り返して仕様を固めた上で実装を依頼したとのことでした。
参加してみての感想
今回、運営としてハッカソンに参加して印象的だったのは、AI活用のテクニックや最新技術の目新しさよりも、各チームが目の前の課題解決そのものに焦点を当てていた点です。その結果、業務改善から社内コミュニケーションまで、幅広い視点のプロダクトが生まれていました。
中でも独立した新しいアプリケーションを作るのではなく、ブラウザの拡張機能という形でUIを改善するDチームの発想に意外性を感じました。
また参加者のアンケートからも、アイデアを形にするハードルが劇的に下がった、AIでできることのイメージが広がったと言う感想を多くいただきました
バイブコーディング以降、コードを書く楽しみが減ったと言う意見も耳にしますが、参加者からこうして肯定的な意見をいただくことができてとても意義のあるハッカソンであったと思います。
まとめ
今回の「人間はコードを書かない」AI駆動開発ハッカソンでは、6チームが1週間という短期間で、社内の「ちょっとした困りごと」を見事に解決する多様なミニツールを開発しました。Webアプリケーションに留まらず、CLIツールやChrome拡張機能まで、そのアプローチの幅広さはAI駆動開発の可能性を強く示唆しています。
またハッカソンを通して私が最も強く感じたのは、AIエージェントの進化の凄まじさです。私自身もAIツールを日常的に活用していますが、限られた時間の中でこれほど実用的なプロダクトが生み出されたことは、想像以上のインパクトでした。「作る」というプロセスが、以前とは比較にならないスピード感で変革していることを改めて認識させられます。
AIエージェントの進歩により、実装の難易度や工数は格段に下がりました。これからの時代は、まさに「作れる」よりも「何を作るか」が圧倒的に重視されるでしょう。今回のハッカソンは、技術を競う場というよりも、AIと人間が協働する未来の開発のあり方、そしてその中で人間が担うべき役割(課題発見、要件定義、AIへの適切な指示出し、成果の評価と改善など)を深く考えさせられる、非常に価値ある機会となりました。この経験が、読者の皆様のAI駆動開発への一歩を後押しできれば幸いです。
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